ひとつ ほどいて
木立 悟





中空の柱から漏れる声
器へと器へとそそがれる糸
底は在るが
見えないほど遠い器へと


手のひらから
刃も銃もこぼれ落ち
消えたはずの雪に沈みゆく
息継ぎの音をたてながら


五つの顔の番人
海のそばの岩の街
白く長い階段
すぎるものらが置いてゆく影


擦り減った場所に糸は降り
踏みしめたばかりの地を隠す
氷のなかを泳ぐ蒼
曇のはざまの指を見る


水色の糸にとらわれ
絵のなかから出られない羽
狭い夜に
響きわたる鐘


時は
時を映すものを顧みない
自ら墓穴を掘るものにも
死を知らぬものにも名前は無い


額は動くが
絵は変わらない
雨と墓を
行き来する指


鏡のなかの曇に
花に覆われた坂が重なる
朱と金の衣の子
水色の糸を解いてゆく


紙の耳を持ち
花びらを持ち 宙に浮く
小さなからだから
降りそそぐ色


夜の雨が響いている
裸の子が薮のなかに消えてゆく
羽の失い絵と
誰も映さない鏡の前に
朱と金の衣が残される





























自由詩 ひとつ ほどいて Copyright 木立 悟 2015-03-16 03:37:08
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