夜の森サクラ(福島富岡町)〜その瞳をみていたら〜より
黒木アン

郷夢をみては
思いだします
あの千本の面差しよ

花灯りのちょうどいいころ
賑わいましたあの時を
思うだけで
還らぬ人がきて
帰りたいと思うのです

三日見ぬ間の桜でも
せめて
花のおさまりに
身もおさまりますよう
返り花でも
憂き世などといわずに
希望を下さい

欲気など
ありません

まっとうに
生きてきたのですから

桜の一ひらには
亡き人の魂が
宿っているとも

末葉にただよわせて
今を生きているのです

どこまでの命か
わかりませんが
慕いあう
そこに生きた
人と花の絆よ

お国はどちらですかと
聞かれましたら
「夜の森のサクラです」と
いいつづけて
いたいのです


自由詩 夜の森サクラ(福島富岡町)〜その瞳をみていたら〜より Copyright 黒木アン 2015-03-12 08:21:05
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