夜が零れる
梅昆布茶

かつて激しくなにかになりたいと
想ったことがあっただろうか

自分以外のだれかになりたいとはいくども考えたが
それはクラスの席替え程度の安易な願望にすぎなかった

ラモーンズのコピー親父バンドの
エネルギッシュな汗をみる

羨ましいがもう社会的メタモルフォーゼも
ままならない我が身
せめて夜に零れ咲く徒花の春を待つ

実体のなかったもののように子供達の笑い声
若芽の和毛のようにちくちくとやさしく痛い

変容は求めずともやって来るものだが
できるならばより私であるちいさな価値に
寄り添ってある小径だったならもっといい

捨て去る訳でもなくあるものは省略され
いつしか融合してゆくもの

いつのまにか様々なものの順序がいれかわり
空いた隙間をまた何かが埋めて行く

容量を超えたものが流れ去るように
この夜に零れ落ちてゆくものを見送り

春宵のほのかなぬくもりに浸りながら
冷たい器の縁を指でなぞる







自由詩 夜が零れる Copyright 梅昆布茶 2015-03-04 21:08:27
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