朝と白
木立 悟






紙の実が地に落ち
音にまみれる
土ぼこり
鳥の声
水の庭
鳴りつづける標


海へ 海へ
蒼は岩をすぎる
百合の耳の子
息つく間もなく染まる羽


何もないところに水は来て
飛沫に 珠に
すぐに消える夢に散らばる
雪のこだま
明るく 遠い
こだま


響きが
円く街を覆う
水は外に向かい 凍る
泡の音が白く 白く
水と野と径を隔てる


少ない朝が降り
鉛のふちどりのざわめきとなり
新たな足跡のない橋を横ぎり
海へ伸びる廃路に落ちる


明るいのかまぶしいのか
何かが白く動かないのか
水の行方も街の行方も
杳として知れない
ただ高く ただ遠く
見えないものが弧を描いてゆく


低い風を
散らばる朝を見つめる子
足跡のない
白い橋の上に立ち
百合が聴くものを口ずさむ






















自由詩 朝と白 Copyright 木立 悟 2015-02-27 00:51:23
notebook Home 戻る  過去 未来