見栄張る
……とある蛙

夕焼けなんか見たって
ちっともかっこよくないことは
分かっていたけれど
お金もいらずにかっこつけるには
これしかないから
汚い街しか見えない崖の縁に立って
夕陽を見たりしている。

テレビでやっているおいしいお店
どこにあるか分からないので
渋谷の街をうろうろしたけど
どこがどこか分からないので
自分の分かるところだけ行った。
自分の分かるところは駅前だけ
これしかないから
汚いのれんをくぐった立ち食い蕎麦屋で
天玉蕎麦を啜ってる。

みんなが面白いという小説読んだって
ちっとも意味分からないことは
分かっていたんだけれど
読んだ振りするかっこを付けるため
新聞の書評欄を斜め読みして
話の中に入っても相づちだけ

ラーメン屋のできあがりの待ち時間
ぼろぼろの成人漫画雑誌を楽しみにしていた
本当はこれしかない

でもかっこつけるののどこが悪いの
結局五十歩百歩って言葉があるじゃない
年とれば忘れることも多いし
忘れたいことも多い
今、歯ぁ食いしばって生きて行くには
こんな事ぐらいしかやりようがない。
見栄張って 見栄張って 見栄張って


自由詩 見栄張る Copyright ……とある蛙 2015-02-26 11:05:44
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