ジグソーみそ汁
吉岡ペペロ

どこでどう間違えたのか今日ぼくは髪を金髪にした。

32にもなってほんといまさらな金髪だった。

妻は先月好きなひとがいるとかで子供たちと出ていった。

友達からもあやしいぞと言われていたからそんなに驚かなかった。

驚かなかったことに腹を立てて髪を金髪にしたのかも知れない。

妻はよく突然海外旅行に行った。

友達はそれを許すぼくに呆れていた。

母は妻とはまるでうまくいっていなかった。

母が子供の誕生日祝いを持って来てくれたとき妻はトイレのなかで吐いていた。

母と父もうまくいっていなかった。

母はよく父に殴られていた。

それはいつもぼくを惨めな気持ちにさせた。

母はどっかに行ってはなんか言い違うとこに行ってはまたなんか言いして親族間をもめさせる天才だった。

そんなことも含めて細かなことでも母は父に殴られていた。

家は妻に取られたからぼくは実家に戻っていた。

妻はレントゲンかエックス線の技師だった。

ぼくはウサギをひざにのせながらタバコを吹かしていた。

ウサギを飼うことにしたのは子供たちからのリクエストだったろうか。

いっぴきめのウサギは着替えていたぼくに踏まれて死んだ。

生暖かい生き物を土に埋めた。

病院に連れて行ったらあとすこしは生きられるんじゃないか。そんなことばかりを考えながら穴を掘った。

子供たちは意外にぼくを責めなかった。妻は明日つぎのウサギを買いに行こうと家族を励ました。

ウサギはにひき買った。

妻はぼくの動きをよくGPSで覗いていた。

同僚に指摘されるまでたまにケータイが点滅するのをそういうことだとは知らなかった。

土曜日はしごしてパチンコをしていたら店内呼び出しを受けたことがあった。

妻と子供たちがぼくを探しに来ていた。

そのときもGPSには気づかなかった。

あのあとみんなで行った食べ放題の串かつ屋さんはいまはもう潰れてしまってない。

車で横を通るたびあそこのみそ汁が美味かったことを最初に思い出す。







自由詩 ジグソーみそ汁 Copyright 吉岡ペペロ 2015-02-26 10:56:16
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