握るは嫌悪の刃
日々野いずる

柔らかな手を傷だらけにして
にらみつけながら
相手の喉元を目がけている

くだけた刃が落ちる鈍く光る地
使えそうなものはあと一つだけ
もろ刃の仕立てられてない原始の刃
それにお互い手を伸ばした

とっ組みあい 引っ掻きあい
刃をシーソーのように押したり引いたり
手の傷を揃わせて
双子の傷を作り合った

雫がしたたった
血にも似た鈍色の涙
彼女が泣いている訳はどこにある

泣いているのは手の痛み
それとも幾重にもかすめた喉の痛み

それを見ているといつの間にか私は
自分の喉に目がけて刃を引っ張っていて

彼女は泣いて
争いを止めようとしている

嫌いな彼女のために
私がやってあげようとしているのに
彼女が望んだ結末へ
嫌いな嫌いな彼女の顔を
もう二度と見なくてもいいように

それでやっつけようとしたのに
すべてをやっつけようとしたのに

彼女が泣いて止めるのは
私の刃を止めるのは
なぜなのかしらと
鏡に訊いた


自由詩 握るは嫌悪の刃 Copyright 日々野いずる 2015-02-19 14:48:57
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