光がどんなに早くたって
地球を廻ることはありません

もし一秒に７回半も地球を廻ったら
ぼくの陰はずーっと伸びて
延びて　のびて　
ぼくに後ろから覆い被さり
また延びて　延びて　のびて
ぼくの陰で地球を縛る

でも　
陰は他にもあって
ぼくの連れた犬の陰　
隣の門柱の上にいる猫の陰　
散歩道のポプラの陰　
エッフェル塔だって陰を作り
自由の女神にも陰が出来る
みんなの陰が地球を廻って
どの陰が誰の陰だか分からなくなって
地球が陰に覆われて
暗くなってしまでしょうか
　
いいえ　光は　
ぼくの裏にも入り込んで
犬や猫の足の間に潜り込んで
ぽぷらの葉裏をすり抜けて
エッフェル塔をくぐりぬけ
自由の女神を隅から隅まで眺め
地球をぐるぐる回って
光で包み込んで陰を　影までも
消してしまうでしょう

しかし光は地球を廻りません
ぼくに　犬に　猫に　ポプラに
エッフェル塔に　自由の女神に
邪魔されて形を　影を産みだし
地球を滑って　宇宙の彼方へ去っていく

いつか　ぼくが　
光より早く移動出来るようになったら
今のぼくに追いつき　
追い越し　幼いぼくを励まし
若い父や母に
「生んでくれてありがとう」と声を掛けて追い越し
生まれて間もない先祖に「ばあ」して
「きゃっきゃっ」と笑わせ　追い越して
生まれたばかりの地球を見たい