ひかり ひかり
木立 悟





握られ
ねじられた硝子の器から
水があふれつづけていた
指のかたちの溝を
無音が浸していた


樹の傍らに立つ鏡
どちらにも在るもの
片方にしかないもの
片方から片方へ
行き来するもの


鳥の声は重なり
別の鳥になり
訝しげな輪は廻り
鏡には映らずに
まぶしさは 手をつなぎ


夢のつづきを見るたびに
それ以外の夢を忘れゆく
影の無い真昼を
すぎてゆく羽


寄生花と雪
ふりはらい ふりはらい
午後になり
誰もいない径に出る
雨の予兆が
歩を重くする


棄てられた街の
どこよりも高い場所に壁は在り
風のたびに降るかけら
鏡に触れては消えてゆく


花冠を透して見る空は
どこまでもどこまでも銀と灰
水の音 白い音
誰もいない径をついてくる蒼


水に囲まれた
終わりとはじまり
ひとつひとつ 異なる空
径の傍らに立つ鏡から
水たまりの底の器から
無音と羽音は
泡のように生まれつづける






















自由詩 ひかり ひかり Copyright 木立 悟 2015-02-17 23:39:25
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