忍者オフェンス~崩壊の序曲~ファウスト
Terry

 達夫はボールをどうしたら良いものかと審判へ歩み寄った。この熾烈な攻防に、審判は厳格にチーム・ベンチ・エリアで待ち構えてください、と指示した。
 ようやく仲間達が相手コートに収まった。だが味方の動きが悪い。パスを出そうにも出せない。長介が達夫の近くに歩み寄り、ようやくパスが出せる配置になった。そのエリアでは相手チームにボールを取られた。
 コートを一巡した。達夫は皇帝の構えで相手陣を見据えた。
?いくぞ、長介?
 長介を確認したが、
?あーぁ。やってしまうんだな?
 と言うような表情でとろとろと歩いている。
?てめーリバウンドは誰がするんだ?
 フェイクショットをした。相手チームの英ちゃんに内部情報を漏らしている。
「あの人なん?上手いの」
「バスケ部五人抜く」
「うそー?」
 会話はそこで止めさせ、長介を達夫の方へ走らせた。長介はこれで二人で攻めることを裏切ったのは二度目だ。後に聞くあのゴールデンコンビをたった一人で攻めていくのはどれだけ大変な仕事か、相手側のチームワークは決まっているようなもので、味方チームは練習すらしていない浅香がいる。
 全員を相手コートへ引っ張らせた。安田は正ちゃんにちょうど誘導機に当たるディフェンスをさせられて、達夫は板倉君にマークさせられていた。パスを手で断り、全員が誰かにマークさせられているとスキャニングして、クイックターンを仕掛けた。---これは、スローラインをすると見せかけて左足を前方へ進むまで板倉君に見せてからその左足から全体を半転させる---
 そして安田にパスを要求した。だが出せない、むしろ出さない。おどおどしたパスを達夫に出した。板倉君は達夫が目線のラインを走って来るのだろうと微笑していた。どこにも達夫を発見できずようやく後ろに発見したときは、時既に遅し。中ジャンプで手早くシュートを放ち、得点ボードにその点数が入ることをとても喜んだ。しかし、女子は何がばれたの? と様々な会話がなされていた。
 達夫は板倉君をあんな無様な表情をさらしてこれから学生生活をどうするんだとも思った。どうやら心理戦模様。


散文(批評随筆小説等) 忍者オフェンス~崩壊の序曲~ファウスト Copyright Terry 2005-02-05 08:36:39
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