電柱森林公園
竜門勇気


電柱森林公園
何年も前の8月の半ばに行ったきりだよ
二日酔いのまま
お前と黙りこくって車乗ってさ
だらだら続く道にうんざりしながらよ

単相線だらけで見どころもなかったし
トランスも錆びててみすぼらしいだけで
くしゃくしゃのナイロン袋から取り出したビールもぬるくて
五キロほど歩いて二人でしばらくゲロ吐いてたっけな
クレオソート濡れの古電柱を見つけてもどうでも良くなってた
水が飲みたいし なんでもいいから腹に入れたかった

休憩所にトーストの自販機を見つけた時は
パンザーマストに小便引っ掛けてる子犬を見つけた時みたいにはしゃいで
あん時のことは時々思い出すよ 人生が厭になった時とかにさ

あれからだいぶ経ったってのはわかるんだ
何年と何ヶ月ってところまで
残酷なくらいわかる 不気味に感じるほどよく覚えてる
けどあれから お互いにお互いに
解るように喋れなくなったみたいで
頷き合うけど お互い互いに
喋るように解かれなくなってたんだ
ぜんぜん違う配線を繋いじまったみたいに
かちりと音がしたままチグハグなまま嵌っちまった

電柱森林公園
その日もふたりとも二日酔いで
ヘタしたら辿りつけないかもしれないけど
行かなきゃダメだ 行こうと思ってなきゃ終わりだ
ふたりとも二日酔いで どっか行きたくなきゃ嘘なんだ
まだ寒いから出来立ての杉の木柱も見れるし
古いUSENのラインも見れるよ
そこでお互い他人になって帰ろうぜ

何も考えないで生きていれば
そのうち繋がるだろう
忘れてた頃にも覚えていた頃にも
ふたりどっかで好きにやってれば
心配してることなんか埋まる

どっちがどっちってこともないまま
コンクリ柱みたいにどってことない場所で
色んな音や色んな人が過ぎてく場所で
何の気なしに思い出すんだ
昔みたいには面白くなくても
そんなに若くなくても
地下に潜って誰にも気づかれなくても
あっちからくるものを
受け止めてそっちに流れてくうちに

出会うさ
そんで頭を抱えたまま
のろのろ車を動かして
しっくりこないなんて
よくあることだって気づくんだ

電柱森林公園に行こう
電柱森林公園に行こう


自由詩 電柱森林公園 Copyright 竜門勇気 2015-02-06 22:36:21
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