水と手のひら
木立 悟






光の結び目に降る雪は
まだ永い夢を食べている
砂が敷きつめられた部屋を
風がひとり歩いてゆく


黒に黒を足して樹々になり
額の端のついばみを数える
銀から蒼へ至る途中の
ありとあらゆる落雷の痕


ひとつひとつかがやいてゆき
巨きな音とともに断ち切られる
余韻のない 縦の静けさ
色だけがただ変わりつづける


     手のひらの川に
      空は降りる
       目を閉じ
        かたちを追う


        まぶしく かすみ
       とどまる
      いつのまにか
     景は進む
    手のひらの荒地に
   雨は刺さる


しるしのなかに落ちる雪
埋もれかけた葉が夜を見つめる
熱を持つものほど深く沈む
涙を浮かべ またたく夜


皆あの暗がりからやって来て
ひとりきりになり 戻りゆく
賽の目をしたたる滴から
無数の虹が聞こえ来る


動くはずのないものが動いたので
手のひらは思わず手のひらを離した
淡いいかずちの幼生が
雨を雨に昇りながら
空の底を震わせていた




































自由詩 水と手のひら Copyright 木立 悟 2015-02-02 21:51:04
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