選挙
葉leaf




生まれてくるとき、私は両親の子供として立候補し、数多い候補者の中から最多票を得て生まれることができた。私の所属する党のマニフェストは、容貌や能力、性格の点においてもっとも両親の子供としてふさわしいものであり、それゆえ私は国民から選挙され、正当に両親の子供として当選し、この世に生を受けた。当時魂であった私は、姿を持たないまま、巫女などを通して演説など選挙活動を行い、華々しい勝利を飾ったのだった。
だが出生だけではない。結婚のときも、私は妻にふさわしいかどうか国民から選挙され、数多い候補者の中から当選して妻の夫となったのだ。実は私はこのときいくつかの選挙法違反をしたが、全ては水面下で行われ、選挙犯罪で検挙されることは免れた。例えば、私は多くの有権者にお金をばらまいたし、戸別訪問も行ったし、多くの有権者に圧力をかけもした。そのくらい私は妻を愛していたし、ほかの候補者もみな選挙法違反をしていた。選挙はもはや選挙法違反の活動の巧みさを競うものとなっており、最も有権者に利益を提供した私が妻の愛を獲得したのだった。どうか軽蔑してくれるな。恋愛というものはいつでもこのような打算の競争ではないか。
妻に子供が生まれるとき、子供もまた候補者の中から選挙されなければならなかった。だが、候補者の一人の魂が私の結婚時の不正を暴いて私を脅迫してきた。もし仮に結婚選挙の無効が確定すれば私は妻の愛を失うし、子供を授かることもできない。私はその魂に最大限配慮し、結局はその魂が当選するように有権者を導かざるを得なかった。かくてその魂は私たちの子供として誕生した。だが、ほかの魂の告発により、子供は選挙法違反で誕生が無効となり、私たちはその子供が一瞬にして消滅するのを目撃した。確かに、その子供は私たちと目鼻立ちも似ていなければ全然賢くもなく、私たちの子供としては不適格だった。繰り上げで当選した次の魂が私たちの子供となったが、この魂は奇跡の逆転に感激し、多少私たちの子供にふさわしくない素質を備えながらも、私たちの期待に沿おうと努力した。
さて、こうして、妻一人子一人を抱える私はサラリーマンとして勤務し、日々妻子を養っていたが、今度は友人が結婚するために立候補したので投票しなければならなくなった。友人もまた派手に策略を巡らせたが、私はこの友人が本当に相手を愛しているのかはなはだ疑問であった。というのも、相手は資産家の娘であり、友人は他に女友達もおり、どう考えてもこの結婚は財産目当てなのであった。そこで私は水面下で動き、真の愛に基づかないこの選挙を、いくつもの不正を働きながら友人の落選にまで導いた。友人にはすまなかったが、選挙とはそういうものである。だが友人は賢かった。彼は私の誕生について選挙無効確認訴訟を起こし、裁判官を買収して私の誕生を無効にしてしまったのだ。かくして、私はいきなり魂に戻され、あの世に帰されてしまった。


自由詩 選挙 Copyright 葉leaf 2014-12-27 12:39:35
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