症例:回帰の病
雨の音


過去というのは時々取り出して

いろんな気持ちで見つめるもので

それはけっして変わらない物でもなく

案外に不確かなあやふやな物

省みて幸せな様に

省みて強くなる様に

少しづつその輪郭は

実際とズレてしまう

けれどもそれはその人にとっての

本物の過去にあたるもので

それは間違いに値はしないだろう


悲しい過去は

どこか人事のようであって

胸のうちにいつまでも潜む

不治の病のようなもので

時折死に至ることもある病だから

そのまま放置することなく

上手く折り合いをつけて

発作の無いよう収めるしかない


そして

過去は退廃的な芸術だから

やっぱり消えゆく物であって

消えゆくものだからこそ

愛おしくも感じるのだろう


自由詩 症例:回帰の病 Copyright 雨の音 2014-12-15 14:17:21
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