肉食動物
藤原絵理子
狸の死骸を突いている鴉は
国道の真ん中で ダンプに踏み潰される
黒い羽は飛び散って
自分も狸と同じように 一塊の肉になる.
通り過ぎる助手席の婦人は 眼を背ける
汚らしい物を見てしまったように 顔を顰める
夜には 行きつけのレストランで
血の滴るステーキを 食べる
ビールを飲まされて 肥え太った牛は
トラックの荷台に引かれる時 淋しい目をする
死んだ狸の目も 驚きに淋しさが混ざっている
もう一羽の鴉が 性懲りもなく
肉を突きにやって来る 仲間の肉も
ベンツの助手席で婦人は 赤ワインの品定めをする