夜。 クリスマスイルミネーション
梅昆布茶

誰かさんが
クリスマスイルミネーションをみたいといいはじめる
いまさらロマンチックなんてねえ

ちょっと時間の風に疲れているのかもしれない
どうせなら宇宙のイルミネーションを眼にしたいものだ
北極圏の夜空に浮かぶ裳裾なんぞを

良い時代だともおもう
情報と物理的な距離の柵がかなり取り払われて
それでも心の距離は誰にも測れない

良い世代だったのだろうか
それはわからないことこれからも

けっしてクリスチャンでは有り得ないじぶん
それでもこの季節がさほど嫌いでもないのだ

函館に居た頃
父は内地で働いていて
間借りした部屋で母と姉と俺と
そんな生活

としこおばちゃんは母の姉だ
女子栄養大学を出ていながら
生来の内向性のために
キャバレーの皿洗いをしていて

でも毎年クリスマスケーキを
調達してくれた

そんなのっそりしたおばちゃんを
叔父達はひそかに熊とか呼んでいた

母は亡くなったが
叔母の訃報はいまだ聴いていない

そういえばかみさんは微妙に音痴だった
それが彼女の魅力を損なうほどには
致命的でもなかったのか
僕も気にもとめないことがらでもあったけれど

僕らが直立歩行したのはつい先日
長い道程はぼくたちの一人旅にも似て
シンボルや言葉を生成してゆく

環境に適応し同等の対価を得ることが生の基本だ
それ以上もないしそれ以下もない

クリスマスキャロルが十二月を覆い始める
電飾された街に今日も仕事のために繰り出す

クリスマスイルミネーションが嫌いではないのだ
今日もガールズバーのまえで
盛り上がったり抱き合ったりする

男女の夜をすり抜けて走る
そんな
クリスマスが嫌いなわけではないのだ










自由詩 夜。 クリスマスイルミネーション Copyright 梅昆布茶 2014-12-10 05:49:35
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