名刺
葉leaf




はじめ名刺は刃のように
私を私から切り離した
名刺の上には私の生首が乗っていて
所属や肩書など嘘ばかりべらべらしゃべる
私は生身の人間だ
そんな機関にはまだ身を任せていないし
そんな偉そうな肩書には反吐が出る
私は腹の底から反論し
白目をむいた生首といつまでも口論した

だがいつしか名刺は葉のように
私という枝から素直に生え出る器官になった
私は生身の人間であるがゆえに
そのような機関と馬が合うし
そのような役割を果たすことに喜びを感じる
私の身体を一枚削れば名刺が生まれ
私は名刺を自分そのものとして沢山の人に与えた
相手の名刺入れには私という人間が
果実のように丸ごと収まった

だがやはり名刺は石板でしかなかった
一度記された私の存在はいつまでも動かない
水のようにしなやかな私の変化に名刺は追いつかない
名刺の上には私の死体がよこたわっている
私はもうそこに書かれているより一層
社会にみなぎる生命を摂取し
夥しい責任を成果として社会に還流させている
生きた私はもうどこにも記されていない
名刺はもはや一枚の偽造文書
私はそこから社会へと限りなく溢れ出してしまう


自由詩 名刺 Copyright 葉leaf 2014-12-07 06:13:32
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