黒い母鵞鳥
大覚アキラ
電気仕掛けの揺り籃は
往けど戻らぬ矛盾の振り子
猫の眼をした赤子が眠る
揺り籠転げりゃ赤子は堕ちる
落ちて真ッ朱な血の花咲かす
オギャアと泣いてデングリ返る
赤子産んだの誰ァれだ
赤子殺ったの誰ァれだ
ウブなあの娘が惚れたのは
上海帰りのヤクザ者
自慢は背中の唐獅子で
酔えば何処でも素ッ裸
桜舞散る春の宵
ドスでハラワタ抉られて
痛い痛いと泣きながら
地獄巡りに旅立った
ウブなあの娘も泣いたとさ
泣いて泣いて泣き続け
涙の河ができたので
あの娘は河原に石積んだ
一つ積んでは父の為
二つ積んでは母の為
三つ積んだら涙も枯れた
気がつきゃお腹が膨らんで
十月十日の月満ちて
猫の眼をした赤子を産んだ
電気仕掛けの揺り籠で
赤子いつまで眠るのか
揺り籠転げりゃ赤子は堕ちる
落ちて真ッ朱な血の花咲かす
オギャアと泣いてデングリ返る
赤子産んだの誰ァれだ
赤子殺ったの誰ァれだ
うしろの正面誰ァれ