風船
nonya


ものごころがついた頃から
僕はどこまでも透明に近い
風船だった

鳩時計式の心臓から伸びる
静脈と動脈が一番こんがらがったあたりに
震えながら潜んでいる僕自身を
誰もがたやすく見つけてしまった

あらゆる視線は
僕の外側を容赦なく突っついて
その場の空気は
僕の外側を執拗に抑えつけた

その度に僕は
自分の吐いた息にむせ返りながら
内側から風船を
膨らませ続けるしかなかった

そんな僕だったのに
君は気に入ってくれたんだよね
僕の外側を
君は陽だまりのように見つめてくれた
僕の外側を
君はさざなみのように撫でてくれた

それなのに僕ときたら
君に触れることすらできなかったんだ
僕の内側で
出口を失くしてくぐもった言葉は
僕の内側で
空しく結露するばかりだった

ところで最近の僕なんだけれど
なんだかちょっと可笑しい

どうやら僕の外側の何処かに
ピンホールが空いているみたいで
精一杯張りつめていた僕の外側が
いつの間にやら萎み始めているみたいなんだ

たぶん油断しちゃったんだろうね

少しずつシワシワになっていく僕を
誰もが優しく笑ってくれるから
僕も仕方なく
というか思わず笑ってしまうんだよなあ

あと2〜3年もすれば
僕の外側は
正真正銘の僕の皮膚になるらしいけれど
ちょっぴり淋しい気もするよ

いつかは
破裂してやろうと思っていたのにね




自由詩 風船 Copyright nonya 2014-11-29 11:26:00
notebook Home