Era
桂
Era
惚けたように突っ立ってたら
怒鳴られて 渡されたトンカチ
わけもわからないままに
今に釘を打ち込む
手の平にできた血豆が潰れて
放り投げたトンカチ
通りかかった先輩が拾って
顎をしゃくって足場を指す
鉄の足場に無数にこびりついた
赤黒い染み
重い腰をあげて先代達の偉業の上に立ち過去を見下ろす
地平線まで果てなく続く不自由と
抗い続ける人々のストーリー
没する前にいっそう燃えあがる夕日が熱く語るから
手つかずの時代にまた 一心不乱にハンマーをふる若者の影が伸びる
電柱から電柱に電線をかけるように
人から人へ 漏れなく時のワイヤーはかかる
時代が区切る この街に圏外なんて存在しないから
プルル
今日もけたましく鳴るコールにうんざりしながらも受話器に耳を当てて時代に応えてる
話終える前にキャッチ音が入って
また保留音と共に流れていったチャンス
指にコードを巻きつけて いじけてる間に混線して引っこ抜いたコンセント
夜になったら無性に誰かの声を聞きたくなって
こっそりまた差し直す
時に火花散る剥き出しの導線
恐れずに握りあえたなら最期はきっと感動死
ピーッと暗闇で終わりを知らせる心電図
言いたいことがあるなら
胸の鼓動が鳴り止まぬうちに
ダイヤルを回して
この世界にメッセージを
突然押し寄せた津波が
積み上げてきたものを瓦礫に変えて
消えていった者達の代わりに花が置かれる
水はとっくに引けてるのに
激しい憤りと悲しみが足元までよせてはかえし 僕等は途方に暮れる
その海岸で瓦礫を重ねる子供達の瞳に今は何も写らない...
見上げると光の消えた街のランドマーク
思わず重ねてしまう
僕等の未来も風前の灯火?
現実を目の前にして
胸の中にまだくすぶりを感じるなら
スコップの柄を掴んで一緒に胸の中の残り火に石炭を放り込もう
顔がススだらけになっても希望があれば笑えるだろ?
煙突から煙を立ち昇らせて先を急ぐタフな蒸気機関車
車窓から舞い込んでくる冷たい風に
臆病風を吹かせられたなら
窓から顔を出して何か叫ぼう
それはきっと未来への汽笛になる
時代は僕等を追い回す
今度は僕らが彼を追いかけるのさ
旅行代理店の中で男がパンフレットを一枚取る
受付の女がカウンターの中で悲しそうに微笑んで首を横に振る
電話が鳴って 彼女は受話器を取る
彼女の瞳から涙が流れて男は戸惑う
「はい...」そう言い終えて彼女は電話を切ると男のパンフレットを受け取って男に優しく微笑む
年表をめくれば一際光り輝く21の数字
過去の人々が夢みて
未来の人々が思い焦がれる時代
「ようこそ21世紀へ」