海と星
阿ト理恵


これが、わたしにとっては、この世の中でいちばん美しくって、いちばんかなしい景色です。1962年11月27日岩波書店初版本「星の王子様」130ベージの景色に似ているけど、すこし違います。


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F鉛筆でひかれた一本線のしたは砂漠ではなく海です。「緑の光線」をみたようなみないようなどうだったんだろうと考えこんでいた後の景色です。ひかりは、ほんのいっしゅんこの地球の上にすがたを見せて、それからまた、すがたを消したのは、ここなのです。 もし、みなさんのどなたかが、いつか、空気がとても澄んだゆうかた、南の海辺を訪れることがあったら、すぐ、ここだな、とわからないような、この景色ですが、おねがいですから、おいそぎにならないで、ハッピーエンドをもたらす翡翠のような光が放つ太陽が沈んだそのいっしゅんのためだけに、この場所で待ち続けてください。たとえ、ひかりをのぞめなくても、そのあとの夜空には、美しい星がまたたいていました、と手紙をかいていただきたいのです。宛先は、みえないけれど、この景色のなかにいる愛しいいきものたち




自由詩 海と星 Copyright 阿ト理恵 2014-11-20 20:23:55
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