Such a perfect day.
madyawn
白昼夢
箒の音
机で眠る
チャイムが鳴る
床に油を引いて
学期を終える
染み込む机の線
垂直の校旗が
ガラスの大きな窓に降り
授業中の吐息は
誰の目もかすめない
時計は真ん中に
時計は真ん中に
チャイムの気配を染み込ませて
廊下の真ん中からぶら下がっている
緑を背負った自転車と
赤いチェックのボタンダウンシャツ
合板とパイプの狭間
横に下がるランドセル
6年間座り続けた椅子
永遠に近い距離を過ごせそうな気がする
スクラム
マスク
風の感触
続くアスファルトの彼方
冷たい川底に指を沈めた
鉄塔埋める星屑
登るけもの道
沈黙を知らない孔雀と
校庭に引かれた石灰のトラックを
何週も何週も僕は走る
三角錐で諦めた僕は
教科書の端を丸める
よく鼻血を出していた
公園
サイレン
焦げる球宴
爪先立って船に乗るのです
三つ叉に分かれる橋の右側は
あの子の家へ続く道で
その橋をゆっくり渡る
雨の日は好きだった
キーボードの仮想が
ゆらりゆらぐ
なかった時代
まだコンピューターが
こんなふうになかった時代
ランダムに積み重ねられた
薄い答案
プリントの落書き
増殖する配色は
きっとうまくいく
きっと世界はうまくいく
給食の放送
音楽のリクエスト
「今日のリクエストは
三年四組 山本雅彦さんの
リクエストで
君をのせて です」
歌を歌おうと
あなたは言う
「あの地平線が輝くのは」
声を合わせて校舎を埋める
(僕は朝一番によく教室にいた
同じぐらい早かったのは坂本君で
よく図書室のクーラーを全開にして
話をしていた。
最近の学校には有無を言わさず
クーラーがあるみたい。
夏は窓を開けて
茹だる暑さの校庭と
溶けたジャングルジムを見下ろして
下敷きを団扇代わりにしていた。
「先生も暑いのよ!扇ぐのやめないさい!」
あの頃は理不尽だと思ったね。
クーラーがなかった世界を知る僕たち
助任小学校120周年。今は140周年ぐらいですか?
今もまだ、あの黒ずんだコンクリートは1000人の
小学生を宿して過ごしている。
真冬でも半袖短パンだった占部君は今も
風邪を引いていないだろうか。
毎日通った駄菓子屋の今津のおばちゃんは
まだ店に立っているだろうか。
小学生相手に200円でお好み焼きを焼いていた
無愛想な勝田のおっちゃんは元気だろうか。)
海岸で
影法師が
空を跨いるので
キラキラに形を変えた
ガラスをひろう
雲が海を埋めて
あの子と
同じ視界を蹴って
あの頃はまだ
輪郭なんてなかったから
光の腕を曲げながら
息をしていただけなんだ
今は夜行バスの明かりの中で眠る
山の電波塔
モラエスの墓
眼下の古里
夕飯の匂い
記号や暗黙ではなく
血の通った名前
三拍子の結界を結露
結果の結論
後何週かで
この跡は消える
つくしが覆う土手を滑る
ミレニアム跨いだ僕達
結わえる
移管する基軸の如何
役に立たない骨などない
藁半紙の裏側こそが個性
寸胴に入ったカレーの焦げ目
海水浴場の飴湯
生姜の舌触り
見える
海
と空
が全て
だった
小太鼓
眉山
大太鼓
神山
横笛
吉野川
金
川内
三味線
助任
蛸踊り
雲梯
編笠
ドッチボール
提灯
ひょうたん島
団扇
三ツ合橋
こうもりぶら下がり
あの子と目が合う夕暮れと
放物線の憧れ
揃えた足取りと
透かした手のひら
玻璃色の花を待つ夢
石楠花とオタマジャクシ
遠く加速する夏休み
塩素の匂い
水着の跡
夜明け前
ビニールハウスの美しさを知っている
群れの輝き
飽きるまで走ろう
ここはあなたの望んだ世界そのもの
まだ
みんな覚えている
誰も忘れていない
ねぇ
先生?