鼠の家その周辺
板谷みきょう
床下の部屋は半地下で
物置代わりに使っているのだ
辺りが畑のせいなのだから
野鼠が床下の部屋に入り込むことは
仕方ないと諦めることこそ
当たり前のことのはずが
夜中にガザゴソと音が聞こえてきたので
妻は翌朝に地下の部屋を見に行くと
冬物の衣類をしまっている段ボール箱の
周りに鼠の糞を見付けた
どうやら寒さしのぎに
野鼠がどこからか
床下に潜り込んだらしい
田舎の農家出身の癖に鼠には滅法弱い
「ねぇ。見に行ってみて。何とかしてよ。」
「あぁ。分ったよ。」
そう返事はしたもののボクは実際
サラリーマンの家庭に生まれた
病弱な子供だったのだ
鼠どころか猫も犬も苦手なのだ
街のドラッグストアーで殺鼠剤を買って
床下の部屋の隅に撒いておいた
何分にも
実際の姿を見ていないのだから
一週間もそのままにして
地下に確認にも行かずにいた
「最近、鼠の音も聞かなくなったけど…
ねぇ。見に行ってよ。」
妻に急かされて渋々階下に降りて行くが
鼠の死体なんぞをどう処分すれば良いやら…
10日は過ぎていただろうか
重い腰を上げて階下を見に行くと
はたして
段ボール箱の隙間に
干からびた小さな鼠を見付けるのだった