木綿に描いた鳩ひとつ
藤鈴呼
鉄塔の上に 留まるハト
箒を持った手を休めて あなたが言う
「あすこに ハトが いますよ」
ハトとは 人ごみと駅前と 豆の似合うアレか?
尋ねると 否と笑う
ハトはハトでも フクロウのように
ホーホーと啼く種類が 有ると言うのだ
ほお と 頷きながらも 過去を思いやる
あの 林の中の 群生を 梟だと妄想した
倖せな 日々を 返せと
バリバリバリ
空をも切り裂くような 雷鳴に撃たれたら
死んでしまうから
空を仰いだままの角度で
それが 一番 倖せなのですと
良くも大声で 戯けごとを
我が手元には バリカンなぞ無い
和鋏しか 無いのだ
輪にした クラフトテープで
お前は 何を 作るのだ
思い出か?
新しい カゴか?
その中に とっときの 蒼い鳥を 閉じ込めて
注連縄代わりに 糸で縫うのか?
何処を?
唇を?
そんなこと させるか
呟きながら 手元ばかりを動かした
白い雑巾が 赤く染まる
我が思いの 濃縮した液体が
一滴 文様と 成り果てたのだ
どうだ 似合うだろう
そう言って 笑う姿が見える
ええ 似合って いますよ
お前ならば きっと
横で 笑顔を 灯すだろうな