なにもかも沈んだ
あおば



芦ノ湖遊覧船の上から
ハンドバッグ落とした
なにもかも無くなった
象牙実印も入っていた

ブラックバスを釣った
匂いの為に皮を剥いだ
Kさんの知恵だ
焼きたてを食うと案外美味しい
スズキに似た味だねと言うと
Dさんがスズキはシーバスというのです
真面目に美しい顔でおっしゃる
彼女は外国語に堪能なのだ
それがどうしたのと言いたそうに
口を動かす人も居る
私は美しくて、美味しくて
優しければ名前なんか気にしないのですと
本心をさらけ出したが
面白いことと一笑に付された

芦ノ湖の船上での語らいを頭に描き
山中をよたよた歩く
熱があるし革靴では少し足場が悪すぎた
黄緑の木々が気の無い返事した
今日もお金のある人はこなかったわね
お土産売り場での会話が聞えてきた
日辺りの良い砂坊ダムの上で
握り飯を食う
焼き魚の焼ける匂いがした





作 2000年4月15日<土>


散文(批評随筆小説等) なにもかも沈んだ Copyright あおば 2005-01-31 23:43:12
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