ほうろう
やまうちあつし

スーパームーンに照らされて
稲穂が豊かに頭を垂れる
案山子は笑顔
それとも泣き顔
百年に一度の夜が
今宵もまた
街では何も起こっていない
驚くほどに何事も
そして地下深くでは
悲しみが静かに脈打っている
預言者や猫らは
そのことを知っているが
どちらもスマホを持たないためか
皆に知らせることができない
匿名希望の風来坊は
お供のアリクイに問いかける
高校時代から解けないままの
方程式を
明日の朝には国境を越えようと
リンゴジュースの残りを飲み干す


自由詩 ほうろう Copyright やまうちあつし 2014-10-28 12:06:04
notebook Home 戻る  過去 未来