茶碗のゆげ
服部 剛
一つの苗を手にした、僕は
じぃ…っと屈み
水面
(
みなも
)
に手首を突っこんで
柔い土に、苗を植える
どんなに風が吹こうとも
どんなに雨が降ろうとも
どんなに陽が照ろうとも
いたずらな童子が
裸足のまんまで踏み荒らそうと
翌朝、のこのこ僕はやってきて
再びひとつの笛を、手に
じぃ……と屈み
震える手で、苗を植える
(いつの日か――必ずや)
暖かい灯のともる
とある家庭の夕餉にて
父と母のまなざしをそそがれる
幼子の
楓
(
かえで
)
の両手に包む、茶碗から
しゅるしゅるゆげを、昇らせる
絵画の情景を――夢にみて
自由詩
茶碗のゆげ
Copyright
服部 剛
2014-10-22 22:53:58
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