通り雨が過ぎても
霜天

そうして
僕らのこれまでの順路を
紙の上に書き出してみる
その上に雲なんか浮かべたりして
無駄に力を入れて笑ってみたり




過ぎ去ったあとで
自然に昔話ができれば
それはそれで、柔らかなことだろうけど
簡単にいかない僕らは
開かない改札に引っかかっただけで
不安になってしまう
いつもだ

にわか雨を用心して傘を用意する
湧き上がる雲が、山に見えたり


何かをひとつやり過ごすたびに
見上げてしまう場所だから
静かな煙の中の街では
いつまでも振り切れないままで
傘を忘れた日には
濡れて張り付いた服の
雨が止めば暖かいこと




それは自然な速度で


絶壁の雲が揺れ動いている
動けない夜に、世界を叩く雨の音
とか
息を潜めて、乗り越えてみれば
傘の中、雨の内側
雨粒の溶けること
白に塗りつぶされて


僕らの周りが加速していく
傘の内側で叩き続けた音も
いつかは笑えるように
透明になっていく
少しずつ


通り雨が過ぎても
傘をさすことを止められずに

すべてが透明になっていく


自由詩 通り雨が過ぎても Copyright 霜天 2005-01-30 02:43:28
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