優しいひとへ
本木はじめ
眠ってるそうではなくて沈黙よあなたを葬るながいまばたき
肉食の僕を嫌いと言うきみもすでに世界に捕食されてる
夜遅く広い畑に穴を掘り埋めるという名の行為を見てた
寄り添っていたいよきみと十億年どこがぼくかもわからぬくらい
わからない森の呼吸に抱かれて揺れるコスモスぼんやり見てた
をさなごの眠る呼吸と同一の速度で胎動し始める春
うっとりと花粉のような微笑して何も言わない花になるきみ
世界からはみだしてしまうものばかりあなたのいないここはどこなの
にこにことほほえみながらきえてゆくきえてゆかないものはないのね
冬の夜自転車置き場にうずくまる手放してしまったものが明るい
次々と大事なものを映し終え流れゆく川さよならさよなら