やけくそ
島中 充

フィリッピン セブ島のストリートチルドレンはゴミ山をあさっている
他人事だと思うな
五十年前 私もあさったことがある
小学校から「つづり方教室」と言う映画を観に行った
子供は蹄鉄型の磁石にタコ糸を結んでゴミをあさった
同じように 私はくず鉄をゴミ山から集め くず屋に売った
十円であった
うれしくて 父に自慢すると
「乞食のような真似はするな」失業中の父になぐられた

ワーキングプアの母親がわが子を殺している
他人事だと思うな
満州から引き上げる時
わが子を殺した母親はかたらないだけだ
すてられた子を残留孤児と呼んだ

食べていけなくなった時
自分の子供に食べ物を与えられなくなった時
私は強盗になり 殺人を犯すだろう
くうものが無くなれば人肉だって食うだろう
それが掟だ

戦前の詩人や作家は
知識や教養があったのに 食うために
戦争を賛美した
それが掟だ 食うための
いま掟が変わったとでもと言うのか

バブル崩壊のあと
国債を発行し 千兆の借金をして生活を維持している
今年も五十兆の国債を発行する
千二百兆 預金はあるが それは我々老人のものだ
お前たち若者のために使うものか
国債の金利が上がったり 円が暴落したら
老人はドルを抱きしめているだろう
もう借金は出来ないぞ 返すのは君たちだ
食うためのそれが掟だ
ユーロ圏がデフレにおちてもドイツは量的緩和に反対だ
一九二三年ハイパーインフレを経験しているからだ
市場の掟を知っているのだ
返す当てのない国債に追い詰められ
わたしの子孫はゴミ山をあさるだろう

この詩はやけくそになって書いた
だからこそ やけくそと思うな


自由詩 やけくそ Copyright 島中 充 2014-10-11 00:27:45
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