訪ねられない朝
陽向






なぐさめられたままの足跡が
振り返られたことのない過去に
何事も言わぬままに付き添っている
その音だけに人々は聴き惚れている

何かあれば裏切られたと言う 何もなくても自矜する
物憂さに唆されて美しいことを言いそんな自分に恍惚とする
そんな自分に呆れた言葉たちは去っていき
その後ろ姿を僕は名残惜しそうに眺める

自分は自分を一番知っている 
でもその自分は世界で一番自分を知らない
もしも知ってしまったら もう何も知る必要がなくなるから
僕はいつまでも知らないでいることを祈りながら 今日もまた知り尽くして 朝まで眠る

君の顔を洗った時 なにもないと思った
ただもう胸が苦しくなって 眩暈が襲ってくる
胸に刻まれる美しいがあまりにも強すぎて
目が合うのがとても怖かった

もう何も言わないでほしい
息切れしてるから
話しかけないでくれ
ほら…いい加減にしたまえ!

夢の心臓は恐怖
ふるえていない者には必要ない
どうしても叶えたくなったら
勝手にふるえてなさい

独り言をぽつりと呟き
独りだと感じて
また独り言をぽつりと呟けば
独り言が二人で 僕を笑っていた

期待していない僕に
期待しているようなことをほざくな
それを期待した僕が馬鹿だった
もうあなたの顔は見たくもない

包み込む世界で包み込まれていない△がここに
いつも同じ答えに辿り着かされる
孤独感が疾走し 関係ない僕が息切れ
いつまでも いつまでも覚えてる

特別な
悲しみは
いつまでも凍えていて
こっちを見ている

命はあるのか
だったらもっと
言葉を知りたい
僕にください

時計が廻る 時計が廻る
目が覚めた時にはその音は鳴り止んでいた
うねる感情は分裂していて
僕は腐っているのか 発酵しているのか分からないまま 瞼で朝を触った














自由詩 訪ねられない朝 Copyright 陽向 2014-10-08 20:28:04
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