愛をめぐる素描
千波 一也


あまりに大きな世界の
ほんのひと粒ずつにすぎない実りは
そのささやかな色づきに
すべてを聞き取り
すべてを見届けたつもりで
素描します

そして素描は
素描の域を出ないのです

それゆえ小さな果実は
震えもします
怯えもします
嘆きもします
惑いもします

けれど
よりひと粒らしさを
明るく放てもするのです

幸せなのかもしれません

拙くても
未完成でも
際限がなくても
前向きにとらえたものを
前向きに勇める慎ましさこそ
幸せなのかもしれません

たとえ
その身やこころがいたんでも
にわかに愛が包むでしょう

その
やわらかな伝わりを題材とする
やわらかな素描の連鎖の
守りのひとつとしての
愛が包むでしょう

いつしか愛を包めるように







自由詩 愛をめぐる素描 Copyright 千波 一也 2014-10-08 13:30:03
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