・ホーキング博士(タップ)画面に射精する
アラガイs


タップばかり押し続けた指先の感覚
あれは黄金のリングが消えた瞬間だった
真っ青な上空から一直線に扉が開き
どこまでも蒼い深海の気圧の中で裸の男女がひとつに戯れていた
岩のような半獣身の肉体から大きな粒の汗をひたたらせる男
濡れた髪をセイレーンのようにどこまでも突きのばす女
二人は吸盤に吸いとられるように嗚咽の渦の中で身体を密着し探りあっている
細長い帯に揺られ重なりあう光
眼がチカチカと痛い
それはまるで時を忘れているかのようだ
あまりの激しさから不確実な描写に一瞬わたしが眼を反らした瞬間
半獣身の男は持っていた眼鏡をデスクの上に放り投げた
するとみるみるうちに男の身体は膨張をはじめ
赤紫色の点滅くり返しながら促すようにこちらに手を伸ばしてきた
眠っている遠い画面の端から怪しげな衣を脱ぎ捨てた星雲が近づいてくる
元素の固まりを薄い皮膜で包み込む気だ
導かれたものは弾力性に富んだやわらかな手触りで
痺れて動かないはずの手足から指先に電流がはしった
ああ…なんとも言えない心地よさだ
むき出しの神経細胞に触れられて身悶える感触
生々しい揮発に全身から力が解き放たれる
この感触は何年も
いや、何十年と忘れていた触感がコンマ数秒ほど脳に伝わっては宙を廻る
これは思いがけずに何かのやわらかな感触を手に入れたのだ
∞∞∞血圧には気をつけてね

わたしは粒子の記憶から思い出そうとしていた
こぼれ出る豊かな母の乳房を
震えながら何度でも濡らしたやわらかな唇
恋人や年上の女性に描いた淫らで切ないシリコン
いま脳を伝いながら刺激の波動を確かに感じている
死んだはずの性器から甦ってきた抱擁
遥か立体と拡がるあれはかに星雲の大画面なのか
…いいえ、ちがうわ
猿の腰掛けか
…ただの染みよ、滲み
軸は斜め左前方45°やや鋭角にしょんぼりと立ち上がり
…痛あ…イテテ…見よあたまの先を打ち付けた
何処?
TanmaTanma重力と歪みを湾曲に擦り抜けて
白い星の光が虚しくデスクの下へと飛び散っては、 いき、 いくう
出た∞∞∞

太陽の熱で目玉焼きが何ヶくらいできるかって量子論的にはそぐわない考えでフライパンを熱してみるならば
むしろ僕はこんな身体になった事を怨むよりも呪うのかも知れない
…だって地球は
いつだって丸いんだもの……引用…
博士そろそろお時間ですよ
永遠の宇宙から目覚めるときにはブラックホールの正体が明らかになるのだろうか
どちらにしても物理的法則性は必ずあるはずだ
しかし、この眼で確かめるより他はない 「∞」 終わり











自由詩 ・ホーキング博士(タップ)画面に射精する Copyright アラガイs 2014-10-08 05:17:21
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