それは曖昧な記憶の隅
アラガイs


似たような幻なら幾つも見ている
運動会や遠足の帰り道
途中で投げ出した試験の最中に
きっかけもなく駆け足で通り抜けた道
傷ついた恋なら一生忘れはしないだろう

出入り口の庭に転がる大きなうんこの塊は嫌だった
それはときどき夢の中に現れては僕を悩ませた
その大型犬が死んでまもなく
拾って来た四ッ目の黒犬はすぐに居なくなってしまった
それから似たような黒犬を幾度か見かけたが(気のせいだろう)と
、それ以上深入りはしなかった
互いが見つめ合った瞬間に
今から考えるとそれは正解だったような気がする

昨日近所の古い家が壊された
幼なじみの姿は見ないまま
通り過ぎた風
雨は雨らしく
空は青い
飼い猫が四匹死んだ
犬は三匹死んで一匹は行方知れずに
僕が生まれるまえに二人死んで
人間も六人死んだらしい
それをよく覚えてはいない
しばらくすると季節の変わりメが薄れてやって来る
明日誰かが生きることをやめた
振り返ればそれだけのこと 。








自由詩 それは曖昧な記憶の隅 Copyright アラガイs 2014-10-04 05:23:26
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