一陣の風
浩一

ビデオレンタル店の前で
男と女の高校生が立ち話をしていてね
お互いに意識してるんだろう
話すたびに笑顔がぎこちないのさ

背の高い男の子は自転車に寄りかかり
女の子は
カバンかなにかを持っていたかどうか忘れちまった
ずいぶん以前のことだから

でもはっきり覚えているのは
彼らのその場をいち早く別れ去りたいという気持ちと
しかしどうにも立ち去りたくないという気持ちが
まる視えだったということさ

そんな時だ 小さな事件が起きたのは
わけもない一陣の風が突然吹いてね
女の子のスカートを完全にまくしあげてしまった
彼女の白い下着は一瞬まる視えさ

でも目をまるくしたのは僕だけで
確かに視たに違いない男の子はそしらぬ顔で
確かに視られたであろう女の子もそしらぬ顔で
なにごともなかったかのように話をつづけているのさ

なにごともなかったかのように話をつづけていたのさ
例のぎこちない笑顔で笑いあってね
でも さすがに
すこしだけ顔をあからめてはいたみたいだけれど

こういうとき谷川俊太郎だったらこう言うんだろうね
「なぜやっちまわないんだ早いとこ!」ってね
ビデオレンタル店の前で
男と女の高校生が立ち話をしていてね・・・


自由詩 一陣の風 Copyright 浩一 2014-10-02 02:29:15
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