箱庭にて この大きな山門より
黒ヱ


比翼と翔け その止まり木に
大切なものを失くし
また その存在すらも忘れた 男の話

ある男
「いざ ここから 初めてを行かん」

川の辺にうずくまる蛙の 泥に似た合唱
好み 幾重も聞き それすらも真似れない
駆ける 稲穂を掠める 飛ぶものに 
恐れを抱いて 想いを馳せて

思い出の人
「なかなか どうして」

新たな花を繋いで それは壱としているのだけども
並び続ける一番達 まえならえ
散りまた芽吹く樹木の 違う花々
その色に 香りに 戸惑いては潜る
深き この大海に

さよならを着付け 歩く
話す それすらもしないまま さよならを渡す
上辺を撫でて ひと筋 さよなら

思い出
「対岸に立つ 群雨 降り注ぐ
 互いが互いを 求め合う 真意も見れず
 一つ一つ大切に 私を眺めては
 至極 当然の重きを抱く」

この望みを植えても 埋まるまま固くなる
「そう ふたりの明日を 思い浮かべても」
己の意味も知らないまま
陰は濃くなり また見えぬものを揺らす

いつかの願い
「あなたの 一言が聞こえませんように」






自由詩 箱庭にて この大きな山門より Copyright 黒ヱ 2014-09-29 23:44:50
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