お前と俺
森川美咲

何だ結局嘘っぱちじゃねえか

十年前もお前言ったよな
「俺たちうまくやれると思うぜ」
俺は結構不安だったんだ

不安は見事に的中した
いつものように別れたが
お前の顔がどうも歪んで見えた
あの日から連絡はぱったりさ

残された俺はそれでもお前を信じて
「うまくやれる」の意味を探したさ
俺がうまくやれなかったから
お前はいなくなったのか

再会はふいに訪れた
戸惑う俺と違って
心から嬉しそうに笑うお前
俺の戸惑いを理解できないと
言わんばかりに

そうかまだ
終わってなかったのか
俺たちはうまくやれているのか
俺は嬉しくなって
ただひとりの友の胸に
飛び込んだのさ

再会の奇跡は偶然の魔法
お前は饒舌に
会わぬ間の冒険の話を聞かせた
俺も話そうとしたら
軽く右手を挙げて
「その話は今度に聞くよ」
今度はすぐだとも
お前は言った

魔法の効き目はそこで終わり
お前は今どこにいるんだ
俺のとっておきの冒険談は
お前にしか聞かせる奴はいないのに

お前はどこかで
うまくやっているんだろうなあ
お前はきっと
今度を信じられる生き方を
しているんだなあ


自由詩 お前と俺 Copyright 森川美咲 2014-09-18 15:33:46
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