平和のつくりかた(だーれも知らないシリーズ1)
森川美咲

だーれも知らない
あるところに
いつも大真面目なんだが
ちょっと空気が読めなくて
頑固でお節介で口うるさくて
嫌われ者の爺さんがいた

村人たちは集まっては
ひそひそと爺さんのことを噂した
何とかならないものかねえ
私はもう耐えられないよ

しかし爺さんは
罪を犯したわけではない
罰することも
追い出すこともできなかった

村人たちもまた
善人でありたかったのだ

村人たちは考えに考えて
ある若者を選んだ
彼も少々空気が読めず
能天気で無鉄砲で
爺さんのことを
嫌いも恐れもしなかった

若者は村人たちに頼まれて
爺さんの家を訪ね
酒を飲み語り交わした

どうやら村人たちは
爺さんのそういうところに
困っちまうみたいだぜ

爺さんは少しずつ
変わっていった
だって今まで誰も
教えてやらなかったんだ

しかし村人たちは
爺さんが変わったことも
若者が何をしたのかも
知ることはなかった

厄介者の爺さんを
変わり者の若者に任せた村人たちは
すぐに二人のことを忘れた

何となく最近平和だな
そんなふうにふと思うだけ


自由詩 平和のつくりかた(だーれも知らないシリーズ1) Copyright 森川美咲 2014-09-18 04:09:37
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