9月の朝に
Lucy

9月の朝には
怒りの帆を揚げた船が行く
9月の夜空には
羽ばたきをやめない鳥たちが
どこまでも転げ落ちていく

お前は赤いサンダルで
落ち葉を何枚踏み躙ったか

9月の朝に
僕は卑怯な亡霊のように
いつまで立っているだろう

僕の試みは
誰にも気付かれることなく
成就されなければならない

僕なんていなかったのと同じになること
それでいて 僕のいる前と
いなくなった後とでは
明らかに何かが違うだろう

風化に耐えうる言葉が
僕にあるのだとすれば

僕は本当の理解者を
1人勝ち得ることよりも
周り中すべての人の
善き話し相手であることの方を望む
嘘つきと言われても

誰かの真っ赤な血で汚れた
サンダルを履いて立ち去るのが
どうか 僕ではありませんように

無口な海が
油のようにぎらぎらと
夕陽を溶かして凪いでいる

誰も傷つけたくないなんて
本当は思ったことなどない
誰よりも
傷ついてきた僕だから
誰よりも優しい僕だから

僕は空っぽのマントを脱いで
今日からは僕らしく
いや僕らしくなく
すべての言葉に耳を澄まして
僕のいかさまを
1から洗い直さなくちゃいけない
決して
誰とも共感せず

決して、誰にも敵対せずに

もしも
最後に残されたのが
勇気なら






(2010年 「蒼原88号」掲載の過去作品)


自由詩 9月の朝に Copyright Lucy 2014-09-17 09:29:22
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