ノート(午後のかたち)
木立 悟





鳥のそばに鳥が降りて

と つぶやく


すると色は
色をやめるのだ
指さえ かなぐり捨ててまで


目は とうの昔に
泡のものだから
灰を踏みしめ 灰を廻る


だが耳はただ 受け入れるのだ
あらゆる色を
血に運ぶのだ


次に降り来る鳥の一羽が
花のなかに落ちて消えても
空も午後も火も動かない


はじめからただひとりのようにふるまうものが
背の花を鳥についばまれている
尽きるまで 尽きるまで ついばまれている


波は波に溺れ
花を残し
花は猫になり 砂を見つめる


誰もいない径のために鋏は泣いて
此処にない雨を切りつづける
足跡を流す 乾いた雨を


代役たちが役目を解かれ
それぞれのそのままに戻るとき
鳥は鳥を抱き寄せて
目のなかに目のなかに花をしまう


























自由詩 ノート(午後のかたち) Copyright 木立 悟 2014-09-11 10:32:19
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