黒き時代の人質は絶対なる抽象 〜ジャン・フォートリエ展/豊田市美術館/2014.8.31〜
komasen333


ゆらめいている
終始つきまとう残響と残夢



輪郭は掴めず
確信は程遠く
核心は色濃く屹立



囚われた時代と
奪われた世界を代弁するかのように
無言の抽象が語りかける



限りなく即物的に縁取られた人物
限りなく琥珀や化石みたく閉じ込められた物体


読み取ることを拒むかのように
読み取る必然性を無化するように
絶対的な独立を漂わせ
深淵な孤立感を醸し出す



感じる前に考えざるを得ない
しかし、考え始めた途端に感じざるを得ない



余白が重力と質量で溢れ返り
抽象が精密と饒舌を比喩している
なんと逆説的で
なんと自然なことか



曖昧はただの曖昧ではなく
あいまいにまで迷い込み
やがては愛埋にまで近似



沈黙は金を越え
静寂は銀に輝き
孤立は美に染まる



ラフな裸婦は挑発するでもなく
精気な生気を漂わせるでもなく
遠征軍の秘めたる厭世を内包するでもなく
ただの裸で
乱雑に時を捲り
乱暴に空を裂き
ふくよかな絶対解と絶対疑を滲ませる


自由詩 黒き時代の人質は絶対なる抽象 〜ジャン・フォートリエ展/豊田市美術館/2014.8.31〜 Copyright komasen333 2014-09-01 14:57:51
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