-4℃黒の領域
凍月



そこには雲ひとつなく
静かな青空があった
白い太陽の線が
存在を地上に焼き付けた


僕の形をした暗黒
何も語らず
何も見ず
僕と同じ動きしかしないが
深い深い底無しの
夜や宇宙のような
永遠の黒の中
醒めきって冷えきった感情が
銀河のように渦巻いている

僕と同じように動く?
人の形をした、黒い穴

もう一人いるのだ、僕は
喜怒哀楽の哀しさだけを取り出し
憎しみ、恨み、妬み、怖れ、卑下、傲慢、孤独の入ったパレットに入れて
それぞれの色を全部混ぜて出来た
濁った濁った混沌の黒
ひたすらに黒い僕がいるのだ
急に悲しくなる
苦しくなる
まるで誰かに後ろから
首を絞められているかのように

そこには何も無い
手を伸ばしても掴めない
本質の影の影が
大きく巨きくなってゆく

眩しすぎたから
明かりを全部消した
ビルの非常階段を
足をもつれさせ
息も切れ切れに上がる
無言で
暗闇の中
階段を上るという同じ動作を繰り返す僕
影から逃げる為に

影が濃くなると僕が薄れる
影がいるなら僕はいらなくなる
お前が僕なら
同じ人間は二人も要らない
光が無ければ影は消える
だから明かりを消したのに
目を開ける
黒い
目を閉じる
黒い
この黒い視界の空間全てが
お前なのか

寒い

全速力で階段を駆け上がり
屋上への扉を蹴り飛ばした
光ある所なら影はまだ
僕と同じ大きさだ


小さくもなり大きくもなる
夜の全てにも瞼の裏の全てにもなる漆黒
もう一人の僕、昏い感情
-4℃黒の領域
お願いだから消えてくれ
瞬きを止めて影おくり
僕の暗い汚い感情
どうか消えてくれますように
青空に白く白く
直黒の輪郭を刻み込んで

跳躍
落下
衝撃
暗転

凍えそうに冷たい

地面に染み込んだ人の形をした血と
人だったものの形をした影が重なる
今際の真っ黒の世界で気付く
僕の領域の中に含まれていたのか
僕の中の、もう一人の僕
-4℃の黒い領域






自由詩 -4℃黒の領域 Copyright 凍月 2014-08-30 19:34:07
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