午後と欠視
木立 悟






どこまでもきらびやかで
まぶしい灯りの下
見えないものは
どこまでも見えないままでいる


通りすぎる車という車の硝子を
緑色に塗りつぶしている
何をされても
何も言わない
人工物たち


翼のようなまばたきも終わり
午後を見つめるものは遠のく
列車は着き また去ってゆく
乗るものが居ても居なくても


透明な羽を持たないまま
透明な骨になった生きものが
空を削りつづけている
ずぶぬれの手
ずぶぬれの手


這う曇と
水の接するところから
暗い光の層が打ち寄せ
家々をまだらに照らしている


暮れには暮れの実の色に揺れ
かたわらの草の色に揺れる径
やがて水の色
曇の鏡をすぎる影


突然の雨に隔てられた双子の猫が
ふたたび会うまでの短い時間にも
午後は変わり 変わりつづける
片目だけが連なり
空を見上げる径で




























自由詩 午後と欠視 Copyright 木立 悟 2014-08-19 08:29:25
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