懐剣
砂木

とにかく頑張る気だった
父を棺に入れる時も 
親戚の人達と共に
ぐにゃりと 固定できない父に
白い旅装束を着せて
和尚様の教えに従い
とにかく 無事に弔いたかった

和尚様が 小学に入ったばかりの姪に
お別れに 父の側にくるように言った
おかあさんに手をひかれながら
父の側まで行かないうちに 姪は 絶叫した

いやあああああああああああああああ
あああああああああああああああああ

おかあさんの手をもぎはなし
家の隅っこまで走り 座りこみ
赤ちゃんに戻ったかのような大声で 逆らった
どんなに誰がなだめても 泣き止まない

しょうがないよね 子供はね
大人達は誰もとがめず 儀式は続いた
弔いは無事に終わり 和尚様は最後に言った
きっと 子供の記憶の中にいつまでも残るだろう

娘たるもの 頑張る気で 弱気は跳ね返して
儀式が滞りなく終わるように祈っていたが
姪が絶叫する姿に どこかほっとした
死に なじまずに叫びたい
ほんとは叫びたかったんだ
でも純粋に死を畏れてばかりもいられない
たとえば泣き叫ぶ姪を 守るためにも

供養にあげる供物 守り守られ 割り割られ 
真剣は 拝む両のてのひらに 消えていく



自由詩 懐剣 Copyright 砂木 2014-08-18 21:21:31
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