初秋
月形半分子

初秋


波打ち際 生まれたての姿のような

素肌を海がさらしている

その波打ち際を

インク瓶に入れて持ち帰りたいけれど

海に波打ち際がなくなったなら

空となんにも変わらなくなるから

暦のうえでは秋という日に

一つだけ 貝殻を持って帰りましょう

インク瓶には蓋だけをして


(井上靖氏に愛を込めて)


自由詩 初秋 Copyright 月形半分子 2014-08-17 00:35:29
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