ひとつ 奏夜
木立 悟





ふくらんだ水を光の茎が
幾つも幾つもすぎてゆく
未明を見る弧
水を穿つ小さな火


誰かが径に刻んだものを
何かが触れてはすぎてゆく
粗れた光が歩みやがて馳せ
立ちどまりつまづき転がってゆく


姿もなく風もない
音だけの渦が土を行き来し
夜を廻し
夜を鳴らす


灰の鱗が現われては消え
宙は煙り わだかまり
ざわめきはしずまり
しずけさという名のさざめきとなり


羽の生えた花
陽のない午後の青
広場 噴水
空の少ない径の水滴


どこまでもどこまでも青は嘘で
自身より明るいものを見下している
青はそれで良いのだろう
救われさえすれば良いのだろう


手足が暗く
胴体ばかりまばゆい虫が
土を金に銀に染めながら
終わりの地へと歩んでゆく


弦は白黒
触れたら鈍色
客人は薄く 客人は広く
溝のある羽をたなびかせつづける


まばたきと頬
指と彼方
埋まることのないはざまへと
打ち寄せる色をたしかめる
とどかぬ音をたしかめる



























自由詩 ひとつ 奏夜 Copyright 木立 悟 2014-08-08 01:46:40
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