うまれたてのぬけがら
あ。

その後、図書館に向かった
ぬるい風が両脇をさあっと通り抜けて
額に浮いた汗を玉のまま流した
水位の低くなった川は太陽を存分に吸い込み
とても正直に光を跳ね返している

とん、と
鎖骨の下辺りに何かがぶつかり
その重みに面食らって自転車を止める
振り返ると、せみが
迷子みたいに頼りなく、ふらふらと飛び
すぐに紛れて見えなくなる

流れた汗があごの下からぽたりと落ちた

前輪のすぐそばには
べっこうみたいなぬけがらひとつ
拾い上げればほんのりとあたたかく
それが
真夏のコンクリートのせいであっても
うまれたばかりのぬくもりだと仮定したって
いいじゃない


自由詩 うまれたてのぬけがら Copyright あ。 2014-08-07 14:29:46
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