日常(八月のとある日)
ヒヤシンス


今日の日に、まだ誰にも踏みしめられていない土が香る。
私は一人、森の小道を往く。
だんだんと緑の匂いも強くなる。
ふと私には聴こえる。あいつはもう辞めさせた方が良い、と。

ああ、忌々しい幻聴め。
私は森の奥へと歩みを進める。
と、私への批難の声がまるで足跡のようについてくる。
ふと振り返る。さらさらと夏の風が吹いている。

見上げると緑の奥に青い空が見える。
私への批難の声が高まる。
休んでばかりのあいつは役に立たない。

使えない、という言葉に胸は疼き、しゃくりあげてくる何かを私はよく知っている。
優しい緑に潤んだ瞳は、八月を呼吸し、遥か古里を知覚する。
天使が朝食を運んでくるまでの間、私は布団に潜り込む。


自由詩 日常(八月のとある日) Copyright ヒヤシンス 2014-08-05 09:58:26
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