妄信する肢体 ☆
atsuchan69

彼らは、けして日々の安穏を知らなかった
 いや、
擬人化した爆弾そのものは
あの夏の日を、とうの昔に忘れてしまっていたのだが

 リトルボーイ、
 ファットマン、
 君たちはこの世に生まれ
 そして起爆装置は驚くべきほど誠実だった

 起爆装置は、病んだ肢体の我々の妄信だった
 ドイツ生まれのリトルボーイ。
 設計図を描いたのも、まさに我々のうちの一人だった
 あの、夏の日は、まさに地獄の最深部だった

やがて大地の果てから果てを巡り、
戦争と戦争を渡り歩く火器のビジネスマン
瞳孔の散大した麻薬中毒の将軍、
誰とでも平気で寝る女たちを躍らせて

平和なときには怪しげな医療ビジネスが蔓延り、
戦時下では武器弾薬が飛ぶように売れる
知らないのは、大勢の病んだ飼育用の肢体たち
どちらにせよ彼らはケツ毛一本まで毟り取られるのだ

 「みんな鼻血が出てる、でも言わないだけ」

やがて神々のミサイルは
おまえたち自身のように過剰に繁殖し、
すべての国境を超えて飛び交い
地球そのものの歴史を塗りかえるだろう

 そしてほとんど意味もなく、
 小型液晶パネルを睨みつづける
 過剰に繁殖したおまえたちのような
 病んだ肢体を癒すために

恥知らずなペニスたちが格納庫から露出し、
あるいは、巧妙に仕掛けられた各所の建造物とともに
あるいは、海の底から鋼鉄のレヴィアタンとともに
あるいは、街行く人の旅行鞄とともに

 「再び戦争をする国になることはあり得ない」

という嘘、
または偽装された真実を――
わたしたちはふたたび
信じてしまってもよいだろうか? 

 「私が安全を保証します。状況はコントロールされています」

二度もトリガーを引いてしまった、
あの夏、ふたつの閃光は、
遠く安穏な未来へと届けられた
きっと誰よりも誠実な裏切りのメッセージだったのに



自由詩 妄信する肢体 ☆ Copyright atsuchan69 2014-08-04 14:54:18
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