コーヒーを教えてくれた ──《コーヒー・アンソロジー》参加
Giton

きみが教えてくれた黒褐色のたしなみ
変な色のお湯、アルコールよりも腹にもたれる毒液
それなのに好きな人が褥でまどろんでいるあけの刻、コーヒーを煮立てるのが習慣になると
この見馴れぬ飲料が自分の一部になったと思うからふしぎだ

見たことのない海の向こうから漂う舶来の香り
どんな密林のはずれで、どんな人間たちが
どんななりをして収穫し、運んで来るのだろう
ともかくその香りできみは目覚め、六枚切りの食パンを2枚焼く

小麦色にやけたパンには決して何もつけず
ただそれを齧りながらコーヒーを飲むきみの
ほおに浮かぶ木漏れ陽のような微笑がぼくは好きだ

一日に一秒でも雲から日が出て笑うならば
あとの時間はずっと重く垂れ込めた空でもぼくはしあわせだ
雨が降るならぼくも傘を捨てて濡れよう

寝床の中のきみの匂いにぼくの匂いがまざり、区別もつかなくなったころ
行く手の思わぬ衝撃はきみを直上からつらぬき、ぼくをつらぬいた
ぼくは何事も無いふりをして、きみのもとへとただ向かう
ハイウェイを埋める雪と自動車の列に阻まれながら
しかしきみはちょうど一年前と完全に同じ行動をただ繰り返し
そして記憶がなかった‥


自由詩 コーヒーを教えてくれた ──《コーヒー・アンソロジー》参加 Copyright Giton 2014-07-31 20:50:54
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